その色・この色 その10
光と影のわずかな変化によって、ある時は華やかな赤味の榿色に、ある時は落ちついた茶色に見えるような微妙な色は、化学染料による大量生産の現在ではほとんど見られなくなり、茶色といえばありふれた平凡な色ということになってしまったのです。
昔から山伏の装束として知られている「柿色」も、布に防水用の柿渋を塗布した「柿渋色」のことだった。
歌舞伎の名門、市川家の「団十郎茶」も、榿とも柿ともいえるような華かな中に落ちつきのあるこの系統の茶色ですが、もはや失われつつある過去の色といえるでしょう。